抹茶の歴史と起源|抹茶の効果効能
抹茶の歴史や起源、発祥地について詳しくご存知の方はいらっしゃいますか。
よく「抹茶は戦国時代の茶人、千利休によって誕生した」というイメージが強いですが、千利休は武野紹鴎 (たけのじょうおう)のもとで学び、日本における茶道を大成した人物であり、抹茶の歴史を語るうえでは欠かせない偉人ではありますが、抹茶の誕生には関わっておりません。
そこで、今回は意外と知られていない抹茶誕生に関する歴史や起源、発祥地についてご説明します。
スポンサーリンク
抹茶の歴史
日本で初めて「抹茶」が文献に登場するのは、奈良・平安時代だと言われています。
この頃の日本は、中国の進んだ制度や文化を学ぶため、多くの遣唐使や留学僧が海を渡っていました。
そして、当時中国で流行していた「お茶」と出会ったのです。
中国では、5000年以上前に漢方の礎を築いたとされる帝王・神農によって、茶の葉に関する解毒作用が発見され、紀元前の頃から既に大勢の中国民の方々のあいだで愛飲されていたという記録が残っています。
その後、733年から804年に陸羽によって茶の研究書「茶経」が世に出回り、中国では茶の葉を酸化させないために茶葉を1度煮たものを固めて乾燥させた固形茶「餅茶 (へいちゃ)」が誕生し、日本からやってきた僧たちは、餅茶に興味を持ち、餅茶の製法「団茶法」とチャノキの種を日本へと持ち帰ったのです。
このとき日本にチャノキの種を持ち帰った遣唐使というのが、最澄・空海・永忠たちではないかと考えられています。
774年、中国から団茶法とチャノキの種を持ち帰ってきた僧たちは、餅茶を茶研 (やげん)と呼ばれる道具を使って碾き、沸かしたお湯へ入れて飲んでいたそうで、当時は眠気覚ましの薬として、主に留学僧を中心に飲用されていたそうです。
この頃から現在の抹茶のように茶葉を挽いて粉末状にし、それをお湯に入れて飲むというのが一般的だったのですが、餅茶の茶葉は茶色く、茶研で挽いた粉末も粒が大きくてザラザラしていたため、お湯に入れても溶けず、茶碗の底に沈んでしまい、なめらかな舌触りを持つ抹茶とはかけ離れたお茶だったと言います。
その後、時代が移り変わり、1141年から1215年に活躍された臨済宗の祖として有名な鎌倉時代の僧・栄西は、2度目となる宋への留学をすることとなります。
栄西が宋に着くと、なんと団茶を粉末状にしたものにお湯を注ぎ、茶筅で練る「抹茶法」など様々なスタイルでお茶を楽しむ人々の光景が目に飛び込んできたのです。
そして、栄西は遣唐使の廃止によって廃れてしまった日本の茶文化を復活させるべく、抹茶法を日本へと持ち帰り、1214年には「喫茶養生記」を著し、鎌倉幕府3代目将軍・源実朝に献上したのです。
栄西が著した喫茶養生記には、このような内容で抹茶が紹介されています。
宋朝にて茶を焙る様を見るに、朝に採って即ち蒸し、即ち之を焙る。
懈怠怠慢の者は為すべからざる事なり。
焙る棚には紙を敷く。
紙の焦げざる様に火を誘い、工夫して之を焙る。
緩めず。
怠らず、終夜眠らずして、夜の内に焙り上る。
好き瓶に盛り、竹葉を以て堅く閉じれば、則ち年歳を経ても損ぜず。
「喫茶養生記」より
ここには、餅茶のように固形にするのではなく、摘み取った茶の葉を焙ることで散茶という新しい茶葉を作ることができることが綴られています。
また、喫茶養生記には、抹茶法の他にも喫茶の効用なども記されており、お酒が大好きで二日酔いに苦しんでいた源実朝の二日酔い治療薬として散茶が盛んに飲まれるきっかけとなったそうです。
抹茶の起源とも言える散茶ですが、餅茶同様、茶研による茶葉の碾き方には違いがないため、ザラッとした舌触りだったと言われています。
抹茶のなめらかな舌触りを作り出すためには、茶臼の存在は必要不可欠です。
茶臼は茶葉を碾くための石臼であり、上下2つの臼から成り立っています。この2つの石臼が接する表面には溝が刻まれており、上の臼の中央にある芯棒のあいだから茶葉を入れることで、上下の石臼が接している面のわずかな隙間から粉砕されたきめ細やかな粒の粉ができるのです。
抹茶の完成に重要な茶臼は、中国からの留学僧が持ち帰ったのではないかと考えられています。
ただし、1307年以前の古文書には「茶臼」についての記述は見られるものの、日本で茶臼が使用され始めた時期が明確にされていないため、この辺りは今後の研究によって明らかにされることを期待するしかありません。
足利氏が政権を握り、京都室町に幕府を開くと、村田珠光 (むらたじゅこう)・武野紹鴎 (たけのじょうおう)・千利休らによって禅の精神と茶の湯が結び付き、茶の礼式が誕生します。
そして、織田信長や豊臣秀吉といった有名な戦国武将たちのあいだで茶の湯が行われるようになり、その後、武士階級へと普及し、現在の「茶道」が完成しました。
いまでは日本だけではなく、欧米諸国でも「MACHA」という愛称で親しまれており、アサイーやココナッツオイル、モリンガなどのスーパーフードと共に、注目を集めるジャパニーズ・スーパーフードとして海外セレブや健康志向の方々を中心に人気を集めています。
抹茶の定義「覆下栽培」は日本独自の開発だった!
日本では、日本茶業中央会によって「抹茶の定義」というものが定められています。
これは、碾茶を原材料とする抹茶と碾茶以外を原材料とする抹茶を区別するために設けられたものなのですが、その定義の1つに覆下栽培であるかどうかが含まれています。
この覆下栽培というのは、茶の湯の発展と共に誕生した日本独自の栽培方法であり、茶摘みの20日以上前から茶樹に藁 (わら)や葭簀 (よしず)などを被せ、太陽の光を遮断し、若葉を収穫するという京都府宇治で生まれた方法です。
京都府宇治は、とても寒い地域だったため、霜よけとして藁を傘代わりに茶樹に被せたところ、この方法で栽培されたお茶がおいしいと評判になり、誕生した栽培法です。
この栽培方法は科学の視点から見ても理に適った栽培法であり、光合成が出来なくなった茶樹は、なんとか自分で栄養素を作り出そうと、少ない光で栄養分を作るために葉を大きく広げてゆきます。
そして、地面からたくさん養分を吸収するようになり、旨味成分が大きく広がった葉へと蓄えられ、あのような上品な甘みを持つお茶となるのです。
今回は抹茶の歴史や起源、発祥地についてご紹介させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。
抹茶も緑茶も中国を起源とする文化であり、共に臨済宗の祖である栄西によって日本へ伝わったのです。
そして、現代の抹茶の定義となっている覆下栽培は京都府宇治の茶農家の方々が茶樹のために藁を被せたことで誕生した日本独自の栽培方法であり、今でも碾茶を原材料とする抹茶を製造している茶農家さんたちのあいだで行われています。
抹茶の歴史を知ることで、抹茶に対する考え方が変わったという方もいらっしゃると思います。
この機会に抹茶の歴史や起源に触れ、いつもと違ったお茶を嗜んでみてはいかがでしょうか。
スポンサーリンク
抹茶とは|緑茶との違い|抹茶の効果効能
煎茶・番茶・茎茶・芽茶・ほうじ茶・玄米茶・手揉み茶など日本には様々な種類のお茶がありますが、どのお茶もツバキ科の常緑低木である茶樹の葉を用いて製造されています。そのなかでも特に手間暇かけて作られているのが、抹茶・玉露・かぶせ茶の3つです。一般的な日本茶は、太陽の日差しをたっぷり浴び、スクスクと生長し...
抹茶の歴史と起源|抹茶の効果効能
抹茶の歴史や起源、発祥地について詳しくご存知の方はいらっしゃいますか。よく「抹茶は戦国時代の茶人、千利休によって誕生した」というイメージが強いですが、千利休は武野紹鴎 (たけのじょうおう)のもとで学び、日本における茶道を大成した人物であり、抹茶の歴史を語るうえでは欠かせない偉人ではありますが、抹茶の...
抹茶の産地と生産量消費量|抹茶の効果効能
北は新潟県から南は鹿児島県と日本各地で積極的に栽培が行われている「緑茶」は、産地によってお茶の香りや味わいが全く異なります。例えば、新潟県北部にある村上市は日本最北端の緑茶の産地として有名な地域であり、この地で生産されている「村上茶」は、春先の寒暖の差によって生み出されるまろやかな甘みが人気となって...
抹茶の栄養成分|抹茶の効果効能
臨済宗の開祖である栄西は、1191年に宋から持ち帰った抹茶法をもとに1211年に日本初の茶の専門書「喫茶養生記」を著し、養生の仙薬として茶の効果・効能を説き、鎌倉幕府3代将軍・源実朝に「所誉茶徳之書」を献上し、大の酒好きで頻繁に二日酔いになっていた実朝の体調を回復させると、茶の持つ効能に注目が集まる...
抹茶の季節と旬|抹茶の効果効能
日本では桜が開花する時期に合わせて、毎年期間限定で抹茶スイーツが販売されています。特にゴールデンウィーク明けから小暑にかけては、抹茶スイーツの最盛期と言われており、日本全国の和洋菓子店やコンビニのスイーツブースなどでは様々な抹茶スイーツが陳列しており、テレビや雑誌、情報サイトでは抹茶特集が組まれ、今...
抹茶の品種と銘柄|抹茶の効果効能
日本で製造されている緑茶・烏龍茶・紅茶は全てツバキ科ツバキ属の常緑低木「Camellia sinensis (カメリア・シネンシス)」の葉をもとに作られています。ですが、どのお茶も水色・香り・味わいが異なり、とても同じ樹木から摘み取られた葉から作られているとは思えませんよね。緑茶・烏龍茶・紅茶は、全...
抹茶,の栽培方法|抹茶の効果効能
ジャパニーズ・スーパーフードとして、海外セレブや健康志向の方々を中心に注目を集めている「抹茶」は、出荷直前の碾茶 (てんちゃ)を石臼で挽き、粉末状にした日本茶です。“テンチャ”というと、抗アレルギー作用を有しており、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー諸症状の緩和および予防に効果が期待されている...
抹茶の製法作り方|抹茶の効果効能
煎茶・玉露・抹茶など様々な種類の緑茶が日本各地で製造されておりますが、みな同じ製法で作られているわけではありません。例えば、煎茶と玉露の場合、露地栽培か覆下栽培という栽培方法の違いはあれど、茶摘み後の製造工程は全く同じであり、反対に、同じ覆下栽培で育った玉露と抹茶では、茶摘み後の製造工程は大きく異な...
抹茶の賞味期限と保存方法変色の原因|抹茶の保管方法
贈り物で抹茶を頂いたけどなかなか消費できず、賞味期限が切れないかと心配されている方や抹茶の新茶シーズンに大量購入したのは良いが、正しい保存や保管方法が分からないという方など、抹茶に関する疑問や悩みを抱えている方は意外と大勢います。そこで、今回は抹茶の賞味期限と保存・保管方法、そして変色の原因と防ぎ方...
抹茶の点て方|抹茶の飲み方
アサイーやココナッツオイル、スピルリナなどと共に世界中から注目を集めているジャパニーズ・スーパーフードのひとつ「抹茶」ですが、2015年7月に行われたとあるネット調査では、20歳から60歳代を対象に「抹茶を点てた経験があるかどうか」を調査した結果、抹茶を点てたことがあると回答した方は、29.6%と3...
冷抹茶の点て方作り方|抹茶の飲み方
温暖化の影響か、毎年夏を迎えると気温30℃を越す真夏日が連日続くようになり、大暑を過ぎたあたりから気温35℃を越す日も増え、多くの方々が熱中症や日射病で救急搬送されています。そんな日本の夏を健康的で涼やかに過ごすならば、“冷茶”は欠かせませんよね。最近では、猛暑を逆手に取り、機能性に富んだ冷茶で日本...
茶道の歴史|抹茶の効果効能
いまから2000年ほど前に中国四川省周辺で茶樹を加工して飲むことから始まった緑茶の歴史は、唐の時代に長安にて喫茶店が誕生すると、多くの人々のあいだで評判となり、寺院でも坐禅の合間に茶を嗜む風習が生まれます。そして、760年に唐の陸羽によって世界最古の茶書「茶経」が書き著されると、当時国際情勢や大陸の...
抹茶の美肌美容効果|抹茶の効果効能
最先端の美容情報に敏感な海外セレブや健康志向の方々を中心に話題となっている抹茶は、「スーパーグレイン (驚異の穀物)」と呼ばれ、NASAでも宇宙飛行士の食事として取り入れられているアマランサスや「“死”以外は何でも癒せる」と言われているニオイクロタネソウ (ブラック・クミンシード)などと同じ、スーパ...
茶道の作法飲み方|茶道のマナー
皆さんは「茶道」についてどのような印象をお持ちですか。「作法やマナーが厳しい」「着物を着て行かないと参加することが出来ない」などお堅いイメージを抱いている方々も多いのではないでしょうか。ですが、基本的な作法やマナーなどを知っておくだけで、誰でも安心して茶会に参加することができるようになります。そこで...
茶道に必要な道具と名称|茶道の作法
これから茶道を学ぼうとお考えの方や自宅でお抹茶を点ててみたいという方も多いと思いますが、茶道を始めるにあたり、どのような道具が必要になるのか、どのような用途なのかなどを事前に知っておくことは初心者にとって、とても大切なことです。そこで、今回は茶道に必要な道具とそれぞれの名称・用途をご説明します。
薄茶と濃茶の違いと飲み方|抹茶の基本
抹茶といえば、ほろ苦さと渋みのなかにほんのりとした優しい甘さを感じることができる大人のお茶というイメージがありますが、抹茶には「濃茶」と「薄茶」の2種類あり、点て方 (練り方)によって、香りも味わいも大きく異なるため、それぞれで全く違った抹茶の魅力を愉しむことができます。そこで、今回は「薄茶」と「濃...
茶道の流派|表千家・裏千家・武者小路千家の違い
ここ数年、“茶道女子”と呼ばれる女性が急増しているのをご存知ですか。茶道は、禅の修行がルーツとなっているため、自然が奏でる音に耳を傾けながら、心を落ち着かせ、精神を統一した状態で行われます。そのため、一挙手一投足に気を配り、ピンと張りつめた空気のなか、流れるような優美な所作を振る舞うことができるまで...
表千家におけるお点前の手順|茶道の基本
千利休の正統な茶道と受け継ぐ「表千家」は、武者小路同様、保守的な色合いの濃い流派であり、裏千家と比べると茶道人口がやや低めとなっています。ただ、表千家家元に伝わる茶道を継承普及ならびに日本文化の向上と発展を目的に昭和17年に発会された「表千家茶道を習う方々の会」によって、日本国内に53支部および海外...
裏千家におけるお点前の手順|茶道の基本
保守的な色合いの濃い表千家や武者小路千家とは異なり、積極的な普及活動を行っている流派が「裏千家」です。裏千家は、茶道専門学校を設立や資格として使用することが出来るようにしており、しかも茶道普及のための教室を全国展開しており、出版物も三千家でダントツとなっています。また、ドラマなどでお抹茶を点てる (...
抹茶のダイエット効果|抹茶の効能
「メリーに首ったけ」や「チャーリーズ・エンジェル」など数々の映画で活躍されているキャメロン・ディアスさんや「ミーン・ガールズ」や「CSI:科学捜査班」など映画やドラマなど多方面で活躍されているアマンダ・サイフリッドさんといった海外セレブたちを魅了しているジャパニーズ・スーパーフード「抹茶」は、いまや...
抹茶のアンチエイジング効果|抹茶の効能
世界で活躍されている人気モデルのミランダ・カーさんは、毎日緑茶にココナッツオイルを入れた特製ドリンクを飲んでおり、彼女の美の秘訣は「緑茶」と「ココナッツオイル」なのではないかと言われています。「あれ?緑茶と抹茶って違う飲み物じゃないの?」と思われた方もいらっしゃると思います。抹茶は碾茶を原材料とする...
抹茶のストレスイライラ解消効果|抹茶の効能
疲れているのになかなか寝付けない、目覚まし時計よりも早く目が覚めてしまう、寝ても寝ても寝たりないという方は不眠症の可能性があります。不眠症には、入眠昏睡・途中覚醒・早朝覚醒・熟眠障害の4タイプあり、酷くなるとこれらの睡眠障害が同時に現れることもあり、不眠症を発症してしまうと、日中に倦怠感・食欲不振・...
抹茶の便秘解消効果|抹茶の効能
便秘になると、身体のあちらこちらに不調が現れるため、早急に解決したい問題ですよね。今までは女性特有の悩みであった「便秘」ですが、今では乳幼児から高齢者に至るまで、幅広い世代の方々のあいだで悩みのたねとなっています。便秘になると、つい頼ってしまうのが「便秘薬」です。いつでも手軽に便秘を解消することがで...
抹茶の適切な一日の摂取量|抹茶の効果効能
日本を代表するスーパーフード「抹茶」には、様々なビタミンやミネラル、食物繊維をはじめ、カテキンやサポニン、テアニンなど健康と美容に作用する栄養成分が豊富に含まれています。そのため、グウィネス・パストロウさんやキャメロン・ディアスさん、日本におけるスーパーフードの火付け役として有名なミランダ・カーさん...
抹茶は妊婦さん授乳中にも飲めるのか|抹茶の効果効能
今まで抹茶といえば、大きめの茶碗に立てられたお抹茶を頂くのが一般的でしたが、最近ではティラミスやクッキー、ホットケーキにマシュマロ、チョコレートにプリン、アフォガードなど和洋折衷様々な料理やスイーツの材料として大活躍しています。ですが、抹茶は煎茶や玉露と同じく「緑茶」の仲間ですので、当然カフェインが...