抹茶,の栽培方法｜抹茶の効果効能

トップページ ＞ 抹茶 ＞ 栽培方法

ジャパニーズ・スーパーフードとして、海外セレブや健康志向の方々を中心に注目を集めている「抹茶」は、出荷直前の碾茶 (てんちゃ)を石臼で挽き、粉末状にした日本茶です。

 

“テンチャ”というと、抗アレルギー作用を有しており、花粉症やアトピー性皮膚炎などのアレルギー諸症状の緩和および予防に効果が期待されている「甜茶」を思い浮かべる方も多いと思いますが、こちらの甜茶はテンヨウケンコウシを原材料とする茶外茶になります。

 

抹茶の原材料となる碾茶は、甜茶とは異なり、煎茶や玉露などと同じくチャノキから作られています。

 

ですが、煎茶と玉露、そして甜茶はそれぞれ栽培方法が異なるため、水色・香り・味わいが大きく異なります。

 

そこで、今回は抹茶の栽培方法、どのように栽培されているのかについてご説明します。

スポンサーリンク

抹茶の栽培方法についてですが、抹茶の原材料である碾茶は高級緑茶として有名な玉露と同じく「覆下栽培」を用いて生産されています。

 

この栽培方法は、寒冷地であった京都府宇治の茶農家さんたちがチャノキを霜から守るために藁を被せたことが始まりだと言われており、ポルトガル人の教会司祭、ジョアン・ロドリーゲス氏が記した「日本教会史」によると、16世紀の終わり頃には、既に覆下栽培が定着していたことが明らかにされています。

 

覆下栽培が誕生するまでの抹茶は、色が白くて苦渋い味のお茶だったのですが、この方法を用いてチャノキを栽培するようになってからは、鮮やかなグリーンの水色を持つ旨味たっぷりのお茶となり、この時期から茶道が隆盛を極め、より多くの人々のあいだで抹茶が嗜まれるようになりました。

 

覆下栽培で育った新芽は、露地で育った新芽とは比べものにならないほど、色・香り・味わいが向上しており、お茶の旨味成分であるアミノ酸の1種「テアニン」の含有量が高いのが特徴です。

 

 

しかし、この栽培方法を実際に行うためには、下骨・簀上げ・藁ふき・肥料など必要なものが多く、多額の費用がかかるため、昭和60年以前まではあまり人気がありませんでした。

 

ですが、昭和60年から平成18年にかけて、ハーゲンダッツやスターバックスといった海外発祥の飲食業が日本へ進出した際、抹茶をたっぷり使用した商品を開発し、日本国内で空前の抹茶ブームが到来したのです。

 

その結果、日本人のお茶離れによって売り上げが低迷していた茶農家さんたちは、抹茶の原材料となる碾茶の栽培を始めるようになり、今では日本各地で抹茶の栽培が行われるようになりました。

 

碾茶の栽培を行うためには、先ほどもご紹介したとおり、下骨・簀上げ・藁ふき・肥料などは必要になるのですが、最近では黒色や茶色の化学繊維で作られた寒冷紗を用いて覆下栽培を行うことができるようになり、今までは檜の杭や竹を用いて作っていた下骨もコンクリート製の柱や鉄パイプで作った「永久棚」と呼ばれる棚へと変化し、栽培もぐんと楽になったため、現在下骨を使用した覆下栽培を行っているのは、京都府宇治にある1件の茶園のみとなっています。

 

 

下骨が完成したら「簀 (す)」を上に乗せます。
葦簀は必ず一反300枚用意しなければなりません。

 

簀の役割は、霜が降りそうな天候のときに事前に広げて霜を防ぐという効果があります。

 

宇治では、むかしから「簀下十日、藁下十日」と「雀隠れに簀拡げ、島隠れに藁ふきや」という言葉が茶農家さんたちのあいだで代々伝わっており、前者は簀拡げと藁ふきについて、後者はその時期を表しています。

 

昔は3月中旬から3月末にかけて下骨を作り、4月5日頃に簀上げ、4月15日頃に簀拡げ、4月末頃に藁ふき、5月10日頃に初摘みと言うスケジュールだったのですが、現在は温暖化の影響もあり、若干時期が早まっているそうです。

 

最後に茶園の周囲に側膜 (たれこも)を張れば、最高の碾茶栽培の環境の完成です。

覆下栽培を行う上で欠かせないのが「肥料」です。

 

覆下栽培では、旨味成分のテアニンを渋み成分のカテキン類へ変化しないように、太陽光を95％から98％カットしなければなりません。
しかし、植物が健康に生長するためには日光は必要不可欠な存在です。

 

そのため、覆下栽培で育てられているチャノキたちは、少しでも日光を浴びようと葉の表面積を広げ、クロロフィル (葉緑素)を増やします。そして、チャノキは不足した栄養素を補うために土壌に含まれる栄養素を吸収し始めます。その結果、鮮やかな緑色をした薄い葉が育ち、臼を挽きやすくなるのです。

 

肥料の量や成分は、茶農家さんによって異なりますが、お茶の生育には、窒素・リン酸・カリ・石灰・マグネシウム (苦土)・硫黄が必要となります。
そのなかでも特に重要なのが、窒素・リン酸・カリの3つです。

 

お茶は非常に肥料要求性の高い植物ですので、窒素を豊富に含む肥料を施用することで旨味が乗ると言われています。ですが、お茶は吸収可能な肥料分には限りがあるため、必要以上に肥料を与えてしまうと、吸収利用率が低下し、おいしいお茶を作ることができません。

 

また、肥料の過剰使用はチャノキの根に障害を与える可能性がありますので、茶農家さんたちは収量や品質を一定水準保つために、毎年与える肥料の量を増減しているそうです。

今回は抹茶の栽培方法についてご説明させて頂きましたが、いかがでしたでしょうか。

 

私たちが普段何気なく頂いている抹茶がとってもおいしい理由は、先人たちの智恵だけではなく、現代の茶農家さんたちの苦渋の決断や並々ならぬ栽培努力の賜物です。

 

抹茶の栽培方法を知ることで、今までとは違った香りや味わいを愉しむことができるようになりますので、この機会に抹茶を栽培されている茶園へ足を運んでみてはいかがでしょうか。

スポンサーリンク